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特集 民法がかわる・わかる(2) 不動産取引への影響

平成29年5月26日に民法のうち債権法の改正案が可決されました。約20年ぶりの大改正で、改正内容は多岐にわたりますが、今回は、不動産取引が改正法によってどのような影響を受けるかを検討します。

 

1 不動産売買契約への影響

例えば、売買契約の対象となる建物に契約以前から欠陥があったことが判明した場合、現行法では、「瑕疵担保責任」の問題とし、債務不履行とは異なる規律をしております。

つまり、契約時に隠れた瑕疵があることが判明した場合には、売主は買主に対して、無過失責任を負い、買主は契約解除や損害賠償を請求できる。但し、解除は瑕疵のために契約の目的が達成出来ない場合に限られ、損害賠償は信頼利益に限られているというものです。

このような規律が改正によって次のように変わります。

(1)「隠れた瑕疵」から「契約不適合」へ

現行法では、売主が責任を負うのは「隠れた瑕疵」に限られます。従って、買主が、その瑕疵を知っていたり、また知らなかったとしても過失があった場合には、売主は責任を負いません。しかし、改正法では、契約不適合があれば、それを買主に何らかの落ち度があった場合にも売主は責任を負います。

(2)無過失責任から過失責任に

現行法では、売主は瑕疵について無過失でも責任を負いますが、改正法では無過失であれば責任を負わないことになりました。

(3)損害賠償の範囲が拡大

契約不適合が存在する場合に、売主は買主に対して損害を賠償する義務があります。その場合の損害の範囲について、現行法では、信頼利益に限られますが、改正法では得べかりし利益までは請求することができます。

(4)追完請求が可能に

現行法では、目的物に瑕疵があっても、買主は売主に対して、修理や交換を請求することは出来ませんが、改正法ではこれが可能となります。

(5)契約解除が容易に

現行法では、例えば、建物に瑕疵があっても、買主が契約を解除できるのは、契約の目的を達成できない場合に限られます。したがって、建物外壁にヒビが入ったとしても、それだけでは解除はできません。しかし、改正法では、このような限定はなく、売主が瑕疵を修理できない場合には、契約を解除できる可能性があります。

 

2 賃貸物件への影響

(1)保証人

アパート等の賃貸借契約に保証人をつけることが求められることが多いと思います。この点、改正法では、保証人が個人の場合には、保証の限度額つまり保証人が負担する債務の上限を定め書面で契約することが義務づけられました。

(2)借主の修繕の権利

現行法では、賃貸物件の修繕義務は貸主にあるものの、借主が自分で修繕する権利について規定しておりません。しかし、改正法では一定の場合、借主が修繕を行い、その修繕費用を貸主に請求できることが出来るようになりました。

 

この記事を書いた人

東京弁護士会所属
福澤武文 Takefumi Fukuzawa
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