コラムColumn
「はれのひ」による被害にあわれた方へ
一生に一度しかない成人式に,購入した振袖を着ることができない。着物の販売及
びレンタル事業を展開していた「はれのひ」が突然営業を停止したことにより,多く
の新成人が,そのような事態に直面しました。私どもが事務所を構えている八王子にお
いても被害が発生しており,状況は深刻です。未だ事態は流動的ですが,現時点で報道
されている情報等をもとに,よくあるご質問に対して,私どもがご助言できることは
以下のとおりです。
Q1:着物を購入する際に,はれのひから紹介された業者に頼んで,購入代金のロー
ンを組みました。着物は,はれのひに預けたままです。今後もローンの支払いを
続けなければなりませんか?
A1:はれのひとの売買契約を解除するのであれば,ローンを支払う必要はありません
。
はれのひは,特定の業者と提携し,ローンを組んで着物を購入できるようにして
いたようです。多くの被害者は,購入した着物をはれのひに預けたままになってい
るため,着物が手元にないのにローンの支払いだけが続くという事態が発生してい
ます。
このような場合に,割賦販売法は,売買契約を解除して,ローンの支払いを拒むこ
とを認めています。これを,抗弁の対抗(あるいは抗弁の接続)といいます。ロー
ンを提供している業者に対して,(1)はれのひが着物を引き渡さないこと,約束
した成人の日におけるサービスを提供しなかったこと等を理由として売買契約を解
除する旨と,(2)今後の支払いを拒否する意思を,内容証明郵便で伝えましょう
。
本来であれば,はれのひに対しても,売買契約を解除する旨の内容証明郵便を送
るべきです。しかし,はれのひは全店舗が閉鎖されており,報道によれば,本部に
も従業員がいません。そのため,たとえ内容証明郵便を発送しても,受取人不在で
発送者のもとに戻ってきてしまうと考えられます。
Q2:はれのひで成人の日に振袖をレンタルする契約をして,代金を全額支払いまし
た。ところが,はれのひが営業を停止してしまったため,成人の日に振袖を着るこ
とはできませんでした。支払ったレンタル料を返してもらうことはできますか?
A:はれのひに対して代金の返還を求める権利はありますが,はれのひに財産が残っ
ているかどうかが問題です。報道によれば,はれのひは大幅な債務超過であり,従
業員に対する給与の支払いも滞っていたようです。大変残念ですが,このような状
態において,支払ったレンタル料を回収することは,容易でないと考えられます。
Q3:購入した着物を,はれのひに預けたままです。なんとか着物を取り戻す方法は
ありませんか?
A:大変残念ですが,現状では,着物を取り戻すことは容易ではありません。はれの
ひは全店舗が閉鎖されており,本社にも従業員がいない様子であるため,着物の返
還を要求しようにも,交渉する相手がいません。
交渉ができないのであれば,着物の返還を求める訴訟を提起することを前提に着物
を差し押さえるという方法が,一応考えられないわけではありません。しかし,そ
の場合には,店舗内にたくさんの着物がある中で,購入された着物がどれなのか,
裁判官にわかるよう証拠によって特定する必要があります。そのような特定は容易
ではないと思われ,大きな障害になります。
Q4:成人式の前に,振袖を着て,はれのひで写真を撮りました。その写真だけでも
欲しいのですが,どうにかならないでしょうか。
A:大変残念ですが,現状では,写真を入手することは容易ではありません。はれの
ひは全店舗が閉鎖されており,本社にも従業員がいない様子であるため,写真の引
き渡しを要求しようにも,交渉する相手がいません。
また,写真はデータで存在していると思われ,どのような状態で保管されているの
かも不明です。そのため,訴訟でその引き渡しを命ずる判決を求めたり,差し押さ
えたりすることも難しいと考えられます。
Q5:はれのひは,これからどうなっていくのですか?
A:通常であれば,企業が破綻した場合には,企業自らが破産を申し立て,会社を清算
する手続きを進められます。しかし,報道によれば,はれのひの代表者は行方不明
とのことであり,すぐに破産が申し立てられる様子はありません。
このような場合には,債権者が破産を申し立てることも考えられますが,申立て
の際に予納金を裁判所に納める必要があります。本件では,予納金が数百万円にの
ぼる可能性があり,これを誰が支出するのか問題になりそうです。そのため,膠着
状態のまま事態が進展しない恐れもあります。
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