コラムColumn

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相続法の改正が検討されています。

昨年5月に、民法債権法分野の改正が成立したところですが、これに続いて相続法分野の見直しも検討されています。今回の見直しでは、(1)配偶者の居住権を保護するための方策、(2)遺産分割に関する見直し、(3)遺言制度に関する見直し、(4)遺留分制度に関する見直し、(5)相続の効力等に関する見直し、(6)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策、などが主に検討されています。

 

そこで、今回は「配偶者の居住権を保護するための方策」という問題に焦点を当てて、説明したいと思います。

現行の民法は、被相続人(故人)が亡くなった場合に、その配偶者の居住権がどのように保護されるかについては何も規定されていません。そのため、たとえ配偶者が被相続人と一緒に何十年も一緒に暮らしていたとしても、相続や遺産分割の結果によっては、他の相続人に家を明け渡さなければいけない事態が発生することがあります。このような事態を回避し、配偶者の居住権を保護するため、今回の改正では「配偶者の居住権保護」が検討されています。

 

その対策として、「配偶者の居住権を短期的に保護するための方策」(短期居住権)と「配偶者の居住権を長期的に保護するための方策」(長期居住権)の2つの制度が現在審議されています。

「短期居住権」の方策案は、配偶者が、被相続人が亡くなった時に、被相続人名義の建物を無償で居住していたときは、遺産分割によって当該建物の帰属が確定するまでの間、無償で使用し続けることができる権利を配偶者に認めるというものです。これにより、被相続人の遺産について分割協議が整うまでは、配偶者は安心して遺産である建物に住み続けることが出来ます。

また、「長期居住権」の方策案は、配偶者が、被相続人が亡くなった時に、被相続人名義の建物で居住していたときは、相続人全員の合意がある場合や配偶者の生活を維持するために必要と裁判所が判断した場合などに限り、一定の期間、その建物全部の使用及び収益をする権利を配偶者に認めるというものです。被相続人の遺産であることに変わりはありませんが、配偶者は当該建物に住み続けることが出来ます。

 

上記で紹介した制度が、必ず反映されるかは審議の結果次第ですが、現行の相続制度の問題点を議論することで、現代社会の実態を考慮したより良い法改正がなされることを期待しています。

この記事を書いた人

東京弁護士会所属
大塚和樹 Kazuki Otsuka
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