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特集 民法がかわる・わかる(1) 「債権」と「物権」の違いについて

平成29年5月26日に、民法の一部を改正する法律が成立し、同年6月2日に公布されました。また、この改正は、一部の規定を除き、平成32年(2020年)4月1日から施行されることが決定しています。そこで、民法改正について様々な角度から解説してく連載記事を配信していきたいと思います。今回はその第1弾です。

 

今回の民法改正は、民法のうち「債権関係」の規定を約120年ぶりに見直すものですが、ここでいう「債権」とはどういうものかご存じでしょうか。

 

民法には、「物権(ぶっけん)」と「債権(さいけん)」という2つの重要な概念が存在します。まず、物権は、「物を直接的かつ排他的に支配する権利」などと説明されますが、一方で、債権は、「ある特定の人が他の特定の人に対して、ある特定の行為をなすこと(あるいはしないこと)を請求しうる権利」などと説明されます。例えば、金100万円を支払う、車1台を引き渡す、楽器の演奏をする、深夜に騒音を出さない、などが債権の内容として挙げられます。

 

では、債権と物権は一体何がどのように違うのでしょうか。

1つの例として、物権には「排他性」があるが、債権にはないことが挙げられます。「一物一権主義」と言って、1つの物について、同じ内容の物権は1つしか成立しません。例えば、ある車1台に対して、所有権は1つしか成立しないため、車の所有者も基本的に1人となります(ただし、「共有」とは別の概念です)。これに対して、債権は、同じ内容の権利が同時に複数成立することが可能です。つまり、映画館で同じ上映回の同じ座席の座席指定券が、システムトラブルにより誤って2人の客に売られてしまった場合でも、2人の客はそれぞれ平等に映画館に対して、買った座席で映画を鑑賞する債権を主張することができます。物理的には、2人の客が1つの座席に座って映画を鑑賞することは無理ですが、2人の客の映画館に対する債権は、どちらも有効に成立しているのです。実際には、座ることが出来なかった客としては、映画館に対して債務不履行責任(債権を行使することが出来ないことに対する責任)を問うことになります。

 

上記の例の他にも、債権と物権の違いとして「相対性」や「優先性」などいくつかの性質がありますが、ここでは割愛したいと思います。上記のように、今回改正される「債権」は、日常生活をする上でとても重要な役割を果たしています。また、機会があれば、今回の債権法改正についても説明したいと思います。

この記事を書いた人

東京弁護士会所属
大塚和樹 Kazuki Otsuka
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