コラムColumn

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多摩地域における創業支援の取組みと弁護士の役割

近年、起業支援・スタートアップ支援の取組みが盛んにおこなわれており、多摩地域もその例外ではない。

今回は、そのうちの一つである「TOKYO創業ステーションTAMA」を視察させていただいたので、その取組みを紹介するとともに[1]、創業支援に対する弁護士の役割を考えてみたい。

 

1 TOKYO創業ステーションTAMAの取組み

 

TOKYO創業ステーションは東京都中小企業振興公社が運営する創業支援施設であり、丸の内と立川にある。立川は、多摩地域の創業支援の拠点となる施設であり、JR立川駅からのアクセスもよく、起業をめざす多くの人が訪れている。

施設は、①起業に関心がある人が情報収集したり、交流をしたりする施設(Startup Hub Tokyo TAMA)と、②起業を決意した人が具体的な事業計画を策定するにあたり、これを専門家が支援する施設(Planning Port TAMA)とに分かれている。

いずれの施設が提供するサービスも原則無料で受けることができる。その点でも敷居は低く、起業に関心がある人が足を運びやすい施設である。

 

⑴ Startup Hub Tokyo TAMA

ここでは、とてもきれいで開放的な空間のなかに、起業を志す仲間が交流をするラウンジや、セミナーを開催できる大きなイベントスペースがあり、また起業に関連する書籍などが充実している。

予約すれば、起業経験者によるコンシュルジュ相談を受けることができ、起業者が最初の一歩を踏み出すうえでの心強い支えを提供している。

 

⑵ Planning Port TAMA

ここでは、約20人もの経験豊富な専門家が相談員として所属しており、起業者は自分の悩みどころに応じて、専門的なアドバイスを受けることができる。

さらに、コンサルティングだけでなく、業種別セミナーや女性起業ゼミなども開催されており、かなりレベルの高いサービスを、無料で受けることができる。

 

そのほかにも、自治体や大学等でのセミナーを開催するなど、地域連携の取組みも積極的に行われており、まさに多摩地域の起業支援の拠点として活躍している施設である。

 

2 創業支援に対する弁護士の役割

 

TOKYO創業ステーションTAMAを訪問して、あらためて近年の起業者意欲の高まりを実感した。とくに、施設の利用者の60%弱を40代から60代の方が占めているとのことであり、若者だけでなく、シニアの方の起業意欲が旺盛なのは新発見であった。

このような起業への意欲と努力が実を結ぶためには、起業者が直面するさまざまなリスクを理解し、これに対処していく必要がある。もちろん、経営面のリスクが一番重要であることは間違いないが、これに加えて法律面のリスクにも備えが大切である。

例えば、

・数人で起業することにしたが、お互いの関係をどうアレンジメントすればいいのか

・資金支援を受けるときの契約条項に問題はないか

・前職は会社員だったが、起業にあたって、前職勤務時代に得た情報やノウハウを自分の会社で使ってもいいのか

などなど、法律面からみれば、きちんと対応しておかなければならないリスクや課題が山積している。

このようなリスクこそ、法律専門家としての弁護士が貢献すべき分野である。

弁護士としては、起業者の期待や悩みどころをきちんと理解したうえで、みずからの法的アドバイスを的確かつ安価に提供できるよう、さらなる工夫を積み重ねる必要がある。

[1]  このコラムは、2023年7月時点の情報に基づいている。

この記事を書いた人

hirata
東京弁護士会所属
平田真太郎 Shintaro Hirata
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