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フリーランス新法について
1 近年、フリーランスという働き方が注目されておりますが、事業者との関係では弱い立場にあることが問題となっています。そこで、フリーランスが安心して業務に従事できる環境を整備することを目的に、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法)が令和6年に施行されました。
2 フリーランス新法は事業者が守るべき義務を定めています。主な義務は以下の通りです。
⑴契約内容の明確化
事業者は、フリーランスとの契約時に同法が定める9項目を書面等において明示することが定められています(同法第3条)。そのため、事業者が業務開始後に同項目を明示したり、同項目を口頭のみで伝えたりすることは同法に違反することになります。
⑵報酬の支払時期
事業者は、成果物の納品を受けた日から起算して60日以内(かつ、できる限り短い期間内)に報酬を支払う義務があります。(同法第4条)。
例えば、契約書上、フリーランスが7月1日から31日までに納品した成果物の報酬を8月にまとめて請求し、事業者はその翌9月末日までに報酬を支払うと定めていた場合、同法では、7月1日に納品を受けた成果物の報酬は8月29日までに支払わなければならないため、このような報酬支払時期の定めは同法に違反することになります。
⑶募集情報の正確さ
事業者は、募集事項を的確に表示する義務があります(同法第12条)。例えば、フリーランスが業務に用いるパソコンなどの機材を自ら用意する必要がある場合に、そのことを募集事項に記載しないこと(誤解を生じさせる表示)や、既に募集を終了しているにもかかわらず、広告を削除せずに表示し続けること(古い情報の表示)などは同法に違反することになります。
3 これらの義務に反すると、行政指導や勧告の対象となりこれに従わずに命令が下され、事業者名を公表される可能性があるため、違反事項があった場合には速やかな是正が必要です。
すでに、義務違反があったとして数十社が行政指導を受けたことが報道されています。
4 フリーランス新法の適用範囲は意外に広いことにも注意が必要です。例えば、税務申告を税理士に依頼しているという場合でも、その税理士が個人経営で事務員もいないという場合には、この法律の適用範囲となります。気づかず違反していたということがないようにしましょう。
この他にも、同法では、①事業者の7つの禁止事項(同法第5条)、②育児休業等と業務の両立に対する配慮(同法第13条)、③ハラスメント対策に係る体制整備義務(同法第14条)、④中途解除等の事前予告・理由開示義務(同法第16条)などこれまで曖昧にされてきた部分が具体的に規定されているため、事業者にとって同法の理解は急務であるといえます。
弁護士は、これらの法改正にも対応しておりますので、困ったことがございましたら、いつでもご相談ください。
(2025年9月8日投稿記事)
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