ご相談事例Case
実質的競業者による会計帳簿閲覧請求
当社は、株主の一人から会計帳簿閲覧請求を受けました。ところが、その株主は、当社のライバル会社の株主でもあるようです。もし、会計帳簿の閲覧を許すと、当社の企業秘密がライバル企業に漏洩してしまうかと不安です。閲覧請求を拒絶できるでしょうか。
株主のうち、総株主の議決権の100分の3、または発行済み株式の100分の3以上の株式を有する株主は、会社に対し、その営業時間内はいつでも、会計帳簿の閲覧請求をできます(会社法433条1項)。そして、会社は、会社法433条2項所定の拒絶事由に該当しないかぎり、請求を拒むことはできません。
そこで、御社が当該株主の閲覧請求を拒否できるかは、拒絶事由に該当するかどうかの問題となります。
会社法433条2項3号は、閲覧請求をした株主が、会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるときは、閲覧請求を拒絶できるとしています。そして、立法担当者の見解では、競業者の社員、株主、競業者のために御社の株式を有する者も、3号に含まれると理解されています。
そして、最高裁判例は、閲覧請求を拒絶するのに、請求者が、閲覧により知りえた情報をライバル企業のために利用するなどの主観的意図があることまでは必要ではないとしています(最高裁判例平成21年1月15日)。そこで、請求者が、客観的に実質的競争関係にあると認められれば、たとえその者にライバル企業のために情報を利用する意図がなくても、閲覧請求を拒絶できます。
ご質問のケースでは、閲覧請求をした御社の株主は、同時にライバル企業の株主でもあるということですので、競業者の株主にあたります。御社とライバル企業との関係が実質的に競争関係にあるといえる場合は、3号に該当し、閲覧請求を拒絶できることになります。
法的要件に該当するかは、当事者関係など具体的事情により異なりますので、事前のご相談をお勧め致します。
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