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会社の組織再編と労働契約

Q:会社の組織再編を検討していますが、労働者との雇用契約については、どのような手続が必要になりますか。

 

A:会社の選択する組織再編の方法によって異なってきます。それぞれ説明していきます。

 

吸収合併の場合

 

吸収合併は、消滅会社の権利義務の一切を存続会社が承継する合併方法です。そこで、消滅会社の労働者の雇用契約も、特段の手続を要することなく、存続会社に承継されます。この場合、消滅会社の労働条件が、そのまま維持されることになります。

そのため、存続会社の側で、新たな労働条件への変更を希望する場合や、新たな就業規則に服させる場合など、労働者の労働条件を変更したいという場合は、個別の手続が必要になります。

 

事業譲渡の場合

 

会社の全部または一部の事業(例えば、部門)を譲渡することに伴い、当該部門に所属する労働者の移転が必要になることがあります。この場合は、旧会社との雇用契約が新会社に自動的に承継されるわけではありません。そこで、各労働者との間で、旧会社との雇用契約の終了、新会社との雇用契約の締結の手続がそれぞれ必要になります。

したがって、新会社への移転について、労働者の個別の同意を得る必要があることになります。なお、同意を拒否したことを理由に当該労働者を解雇することは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないとして、解雇権の濫用と認定される可能性があります。

 

会社分割の場合

 

会社分割の場合は、分割契約または分割計画が作成され、これに記載された労働契約については、各労働者の同意なく承継会社に承継されます。

しかし、それでは、旧会社に残る労働者、新会社へ移る労働者それぞれに不利益が生じえますから、法律(労働契約承継法)により、労働者との間の事前協議などが義務づけられています。もし、この協議が行われなかったり、協議が行われても会社からの説明や協議の内容が不十分であるときには、労働契約承継の効力を裁判で争うことができるとされています(最高裁判例平成22年7月12日)。

 

以上の通り、会社分割を選択する場合は、労働契約承継法をはじめとする法令の様々な規律が設けられていますので、特に注意が必要です。それ以外の方法の場合でも、労働者保護の観点から、労働者と協議することが適当と思われます。

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