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退職慰労金の不支給について

Q:当社には、退任する取締役には、一定額の「退職慰労金」を支給すると定めた退職慰労金支給規程があります。しかし、今回退任するAについては、在任中から職務怠慢など好ましくない点が多々あり、退職慰労金を支給することには社内の反発があります。支給しないでも問題ないでしょうか?

 

A:株主総会において、「Aには退職慰労金を支給しない」との決議をすることにより、不支給とすることができます。

 

役員の報酬は、定款に定めがない場合は、株主総会の決議に基づいて支給しなければなりません(会社法361条)。株主総会の決議を経ずに役員に報酬を支給しても、それは無効です。退職慰労金も、それが「職務執行の対価」として支給される限り、報酬に当たります。通常、退職慰労金は、長年役員として重責を担ってきたことへ報いる趣旨で支給されますから、報酬に当たる場合が多いと思われます。そうすると、退職慰労金を支給するにも株主総会決議が必要です。

 

では、不支給とする場合は、どうすればよいのでしょうか。判例は、退職慰労金の支給に株主総会決議が必要であるのは、支給の有無や金額について株主総会の自主的判断を尊重する趣旨であると解しています。したがって、退職慰労金を支給しないと株主総会が決議すれば、その判断が尊重されることになります。

これは、退職慰労金支給規程などの「内規」が存在する場合にも当てはまります。内規が存在しても、株主総会はこれに拘束されずに、その判断で不支給決議をすることが可能です。

 

ただし、注意が必要なのは、不支給決議をしても、それが公序良俗に反する場合は決議が無効となり、退職慰労金請求権が発生する場合もありうることです(東京地裁平成9年8月26日判決)。そのため、不支給とする理由に正当性があることが必須です。

また、「退職慰労金については取締役会に一任する」との決議内容では不十分です。この場合、「取締役会に一任」とは、すでに存在する退職慰労金支給規程に従って支給することを一任する趣旨と認定されてしまいます(東京地裁平成10年2月10日判決)。そうすると、支給しないことも含めて取締役会に一任したということはできず、この場合に不支給とすると、取締役は不法行為責任を負います(上記平成10年判決)。

 

これとは別に注意しなければならないのは、不支給とする議案を株主総会に提出したことが取締役の任務懈怠責任となる可能性があることです。

 

不支給とする理由に正当性があるか、その手続は適正かといった点について、事前に弁護士にご相談頂くことをお勧め致します。

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