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ご相談事例Case

離婚問題

別居中に支払われる婚姻費用は、税法上課税の対象になりますか。

Q:私は、夫と別居して2年になりますが、別居を開始してから現在に至るまで一度も婚姻費用をもらっていません。過去2年分の婚姻費用を夫からもらう場合、課税の対象になってしまうのでしょうか?

 

A:まず、「婚姻費用」について説明します。

民法760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。これにより夫婦は、衣食住の費用、医療費、子の養育費や教育費、その他交際費など、およそ婚姻家族の共同生活を維持するために通常必要とされる費用を互いに負担し合う義務があると解されています。

婚姻費用の分担は、通常、収入の多い夫(妻)から、収入の少ない妻(夫)に対して、金銭で支払うことで行われます。また、最高裁判所は、過去分の婚姻費用の請求についても、これを認めています(最高裁大法廷昭和40年6月30日決定参照)。

 

それでは、婚姻費用の支払は税法上どのように取扱われているのでしょうか。

課税所得の範囲や計算方法等を定める「所得税法」では、非課税所得に該当するものとして、「学資に充てるため給付される金品(給付その他対価の性質を有するものを除く。)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」が挙げられており(所得税法第9条1項15号)、婚姻費用の支払を受けたとしても、非課税として取扱われます。

 

また、相続税や贈与税の課税範囲等を定める「相続税法」では、贈与税の非課税財産に該当するものとして、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」が挙げられています(相続税法第21条の3第1項2号)。

もっとも、ここでいう「生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産」とは、「生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産」を指し、預貯金した場合などには通常必要と認められるもの以外のものとして取扱われてしまいます(相続税法基本通達21の3-5)。

 

このように税法は、夫婦間における扶養義務を履行するために給付される金員である婚姻費用について、経済上の「所得」としつつ、非課税の対象とする取扱いをしていますが、婚姻費用を受け取る側の資力や家計の状況などを考慮しつつ、生活費や教育費として必要と認められる範囲を超える部分については、贈与税の課税対象とする取扱いがなされています。

 

そうすると、過去分の婚姻費用の請求が、判例上認められることは前述の通りですが、仮に過去分の婚姻費用が全額一括で支払われた場合、生活費や教育費として必要と認められる範囲を超える部分について贈与税が課されてしまう可能性がありますので注意が必要です。

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