取り扱い業務Services

ご相談事例Case

離婚問題

子どもとの面会を強制的に実現する方法はありますか?

Q.離婚した妻が子どもを私に会わせるのを拒否しています。その場合どうしたら良いでしょうか?

A.親には子の福祉の観点から子どもに面会する権利があります。子どもと親とが面接することは子の福祉の観点から極めて重要なことです。

ところが、実際には、親権者となった親が、元配偶者に対する嫌悪感などから、子どもとの面会を拒否するケースがあります。そのような場合に、裁判所の手続(調停や審判)を利用できることは、《離婚後でも子どもに会うことはできますか》をご覧ください。

では、調停や審判が成立したにもかかわらず、それでも面会が拒否されたら、どうすればよいのでしょうか。その場合でも、次のような手段があります。

1.履行勧告制度を利用する
調停や審判で面接交渉が定められた場合には、家庭裁判所の「履行勧告」の制度を利用することができます。履行勧告とは、家庭裁判所が当事者に対して、調停や審判の内容を実現するよう勧告するというものです。家庭裁判所の調査官が相手方に面接するなどして説得を行い、面接交渉が実現されるケースもあります。

2.強制執行を申し立てる
また、調停や審判に基づいて強制執行を申し立てることもできます。ただし、強制執行の方法が問題となります。

強制執行には直接強制と間接強制という異なった方法があります。

直接強制とは債務の内容を直接実現する強制執行の方法です。例えば、お金を返してもらいたい請求という場合には、財産を差し押さえたり競売にかけてお金を回収することができます。お金を返してもらいたいという請求内容が直接実現されることになるので直接強制といいます。

ところが、子どもに面会したいという請求の場合には、直接強制はできないと考えられています。なぜなら、直接強制とは、例えば執行官が相手方の家に乗り込んで子どもを連れてきて面会を実現させるということを意味しますが、このような方法は子の福祉の観点から問題があると考えられるからです。

それでは、間接強制はどうでしょうか。

間接強制とは、債務の内容が実現されないあいだ、債務者に債権者に対して一定額の金銭の支払いをさせるという強制執行の方法をいいます。

例えば、月に一度子どもと面会させる旨の審判が出たにもかかわらず、相手方が子どもとの面会を拒否している場合、面会拒否の回数ごとに5万円を払うよう相手方に命じるのです。面会を求める側としてはお金を払ってもらっても子供に会えるわけではありません。しかし、相手方にお金を払わせることで、面会実現を間接的に強制する効果があります。その意味で間接強制なのです。

最高裁判所平成25年3月28日決定は、面会交流について審判で日時、頻度、面会時間、子の引渡し方法等が具体的に定められている場合には、間接強制の方法による強制執行が認められるとしています。一方で、調停条項に基づく間接強制の申立について、調停条項の記載の仕方や、日時、場所等が具体的に定められていないとして、間接強制を否定した判例もありますので、調停条項の記載について注意が必要です。

3.損害賠償(慰謝料)請求をする
相手方が不当に面接交渉を拒否した場合には、慰謝料を請求することができます。判例の中には、500万円という高額な慰謝料を認定したものもあります。ただし、相手方が面接交渉が子の福祉に反すると主張・立証した場合には、慰謝料請求が否定されるケースも考えられます。

4.親権者の変更を申し立てる。
面接交渉を拒否する相手方は親権者としてふさわしくないとして、親権者の変更の審判を裁判所に申し立てることが考えられます。

ただし、親権者の変更は、面接交渉の拒否という一事だけで決められるものではなく、子の福祉の観点から様々な事情を総合的に判断して決められるものであり、裁判所に変更を認めさせることは、実際には容易ではありません。

一覧へ戻る
お問い合わせ

悩み事はこちらよりお気軽にご相談ください。
専門弁護士がご対応いたします。