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遺言・相続問題

「相続させる」趣旨の遺言と特別受益

Q:私の父は、兄に5000万円相当の「不動産を相続させる」という内容の遺言書を残しました。父にはその他に5000万円相当の遺産があります。この場合、残っている遺産は、私と兄とで2分の1ずつ分けるのですか?

 

A:兄に「相続させる」とされた不動産が特別受益にあたるのであれば、不動産の5000万円を持ち戻し計算することになります。したがって、

見なし相続財産 5000万円(不動産)+5000万円(その他財産)=1億円
具体的相続分=1億円×2分の1(法定相続分)=5000万円
となります。従って、兄は不動産ですでに5000万円を取得するので、その他の財産は全て「私」が取得することになります。

それでは、「相続させる」と書かれた遺言は特別受益になるのでしょうか。

この点、「相続させる」と記載された遺言は、通常、遺産分割の方法を指定した遺言であると理解されています。つまり、お父さんは兄に対して不動産を取得させるという遺産分割の方法を指定したのです。このような「相続させる」遺言は遺贈とは区別されています。

ところで、特別受益について規定している民法903条には、「遺贈」という言葉はありますが、「相続させる」遺言については書かれていません。したがって、「相続させる」遺言については特別受益の適用はないとも思われます。

しかし、遺贈であっても、「相続させる」遺言であっても、一部の相続人が特別な利益を受けることには変わりありません。遺贈であれば特別受益が認められ、「相続させる」遺言であれば特別受益が認められないというのでは不公平です。

従って、「相続させる」遺言の場合でも遺贈の場合と同様に持ち戻し計算をすべきです。山口家裁萩支部平成6年3月28日審判、広島高裁岡山支部平成17年4月11日決定などは「相続させる」遺言につき持ち戻し計算することを肯定しています。

しかし、遺言によっては、「兄は、不動産を取得せよ。そのほかの財産は法定相続分通り分割せよ。」というのが遺言の趣旨と考えられる場合もありえます。このような場合には、「相続させる」と記載された財産は持ち戻しと対象にすべきではありません。遺言が作成された経緯や、被相続人と相続人との関係等を具体的な事情によっては持ち戻し計算が否定される余地もあるものと考えられます。

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