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ご相談事例Case

交通事故問題

債務承認の範囲

Q:交通事故の加害者が事故の責任については認めているものの、損害額について争いがあり、債務の一部だけを認めている場合、時効中断の効果は債務全額に及ぶでしょうか。

 

A: 交通事故を理由とする損害賠償は,不法行為に基づく損害賠償請求に該当するため,民法724条前段により「被害者が損害及び加害者を知った時から3年」で時効になります。

ところで、損害額についての示談交渉中に,交通事故の賠償金額について争いになることはよくあります。一方、債務者が債務を承認した場合、時効は中断します。そこで,被害者が請求する金額のうち一部についてのみ支払義務があることを加害者側が認めている場合に,承認による時効中断はどの範囲に及ぶのかが問題になります。

 

この問題に関して裁判所は,

①交通事故による損害賠償債務は,それ自体が治療費や休業補償費などの各項目によって分けられるものではなく,全体として1個の損害賠償債務として発生していること,

②交渉段階においては具体的な賠償額が不確定であり,最終的に交渉や裁判によって賠償額が確定すれば,当初から賠償額全部について承認していたと考えられること

などを理由として,一部についての承認は,全部についての債務承認として時効が中断するものと判断しています(大審院大正8年12月26日判決,東京地裁昭和43年6月20日判決,東京地裁昭和49年3月12日判決)。

 

したがって,交渉段階において加害者が自認している賠償額を超える部分についても,時効中断の効力が及ぶといえます。

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