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ご相談事例Case

建物の無償使用は特別受益になりますか?

Q.兄は、亡くなった父名義の家屋を長年にわたりタダで使用していました。親子とはいえ、兄自身のものではない家屋を無償で使用したことは、ほかの兄弟が自分で住居費を支払っていたことに比べると、特別な利益のように思います。これは特別受益になりませんか?

A.これは、原則として、特別受益にはならないと思われます。

例えば、兄が、20年ものあいだ、なんら家賃等の支払いをすることなく、亡父名義の建物で生活していたケースを考えてみましょう。この地域の家賃相場額を月5万円だとすると、兄は20年間で1200万円もの利益を得ていたことになります。では、遺産分割にあたって、この1200万円は、すでに兄が遺産の一部を受け取ったものとして計算する(持ち戻し計算をする)べきでしょうか。

しかし、特別受益というのは、「遺産の前渡し」といえるような贈与などについて認められると考えられています。では、親が自宅に自分の子どもを住ませることは「遺産の前渡し」でしょうか。親が子どもを自宅に住まわせても、それによって親の財産が減るわけではありませんので、これを遺産の前渡しと捉えるのはふさわしくないように思われます。それゆえ、この場合には、特別受益は認められないことになるのです。

この点、大阪家裁平成6年11月2日付の審判は、兄が長年使用していても、被相続人の財産には何らの減少がないという理由で、特別受益にはあたらないと判断しています。また、このケースでは、特別受益だと認めても、持ち戻し免除の意思表示が認められるとして、持ち戻し計算をすることを否定しています。

反対に、建物の使用利益の持ち戻しを認めた判例は、私の知る限り存在しません。では、建物の無償使用の利益は、いっさい特別受益として認められないのでしょうか。

私は、そう言い切ることもできないと思います。例えば、父が所有する建物がアパートで、その一室を兄が無償で使用していたというような場合には、その一室分だけ父の家賃収入が減ることになるわけですから、このような事情があるケースでは、兄に特別受益が認められる余地があると思われるからです。

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